うねおろぐ~生きる目的を失ったリタイア中年~

本業漫画描きの掃き溜めブログ。哲学/瞑想/メンタル/隠居/仕事の話など

小説「コンビニ人間」読んだ

読んだ、ではなく聞いた。

ネタバレあるよ

レビューというか要点書きなぐるだけだけど

コンビニ人間

コンビニ人間は私らしく生きる物語。

ただ、内容がゴリゴリの負。

現実的ではない私らしく生きる物語を、マイナスの方に現実的でなくしたストーリーだと思う。

私らしく生きてたらいい結果が舞い込んだ、なんて少女漫画的ご都合ストーリーではなく

世間的に是とされない形でしか私らしく生きる事しかできない話。

異質な主人公

世俗的な価値観や道徳を理解できず

指示がないと一般的な価値観も踏襲できないような人間として生きられない女性が主人公

コンビニバイトで18年以上働いている

他の仕事をしようと思ったができない。

結婚どころか食べ物などの価値観も持ち合わせておらず、加熱した野菜に醤油をかけて食べているらしい。

あらすじとネタバレを書きなぐるよ

異物を排除する世界で

普通でない自分を「治そう」とする主人公だが

治し方もわからないし、あくまでも、よくしてくれた妹のためという事が発端になり、おかしくなっていく

その過程で、シラハという35歳コンビニバイトもこなせない社会不適合の男を家に住まわせ、エサを与えるようになる。

その詳細を知らない周りは喜んでくれるが、

ある日、詳細を知らされた妹は涙を流し初めてしまう。

どうすれば治るのかわからない主人公は、シラハを飼う事で普通になろうとする。

シラハは、世間の価値観に暴力を振るわれていると認識している青年で、主人公に隠してもらう事で生き延びようとする。

ある日、主人公はシラハの指示通り18年務めたコンビニをやめて、定職につくため履歴書を書く日々。

今までコンビニが基準になっていた主人公は、生き方のバランスを崩し、起きる時間もわからなくなってちぐはぐな生活を送る。

面接当日、シラハとともに会社に向かうが、途中寄ったコンビニで、コンビニの中がはちゃめちゃな事に気づき、社員のフリをしてコンビニを整理しバイトを指示し始める。

その様子を見たシラハに外に連れ出されるが

ここではじめて主人公は、普通である事よりコンビニ店員である自分を選択し、シラハを突き放し、元の生活に戻る事になる。

正しい価値観という暴力が容認される社会について

この主人公はかなり異質ではある。

赤ん坊が泣き止まないならもっといい方法があるのになぁ、とナイフを見つめるような主人公だ。

そういった異質さの極端な描写はあくまでも創作だからだろうけど

この物語は、普通である事を強要する社会で、普通がわからない人や、普通を踏襲できない人は何かしら感じるものがあるような作りになっていると思う。

出てくる人間はよくもわるくも、ほとんどの人間が気持ちが悪い。

しかしその中で主人公だけが圧倒的に世間を傍観しており、普通である事も異質であることも特に望んではいない。

わからないだけだ。

このわからなさは、誰もがもっていると思う。

原因は世間が、CMやドラマで作り上げた、「理想の幸せ」によるものだと思うけど。

そういったものに沿えない自分をどうにかした方がいいのかと薄ぼんやりと抱えていきる主人公が

最後には「コンビニ店員でいる」という選択をして終わる。

装飾が異質だから、奇妙な作品に見えるけど。

これはよくある「私らしく生きる物語」だ。

私らしく生きる物語は、女性向け作品で非常によく散見される。

が、この私らしくの結果が多くの場合「世間の思う幸せ通り」の結末を迎える、ご都合主事の少女漫画的ストーリーになっている。

当たり前だ。

みんな創作には夢をみていたいのだから。

そして私らしく生きる物語を好むのは20代30代前半の比較的若い女性だし。

そういった結末が「自分にもやってくる」と信じたい世代だ。

残念ながら、世間の価値観の押し付けを離れたら、世間が羨むような私らしい夢の生活がやってくるなんて事は、無い。

結局それは、世間の価値観を下に見るためのステータスを手に入れる話であって、本来の私らしく生きるというのは

他人に卑下されようが馬鹿にされようが気にしないという事だろうと思う。

世間の「私らしく」って所詮、ご都合創作や自己啓発マンの商材になってるだけやしね。