うねおろぐ~生きる目的を失ったリタイア中年~

本業漫画描きの掃き溜めブログ。哲学/瞑想/メンタル/隠居/仕事の話など

十二国記 月の影 影の海(上)読んだ

ネタバレあるよ

月の影 影の海

魔性の子読みおえた事って書いたかおぼえてないけど。

こっちは本編。

魔性の子はローファンタジーで現代の日本が舞台になってるけど、この作品はゴリゴリ異世界

あらすじ?

あらすじ描く必要あるんかと思うけども。

ネタバレあるよ。

優等生な女子高生、中島陽子がある日謎の金髪イケメンに異世界に連れて行かれる。

異世界に行く途中、金髪イケメン達とははぐれてしまい1人で異世界を生きていく事に。

預けられた剣と、力を貸してくれるが全くしゃべらない身体に取り付いた妖魔と共に、襲ってくる妖魔から森を逃げ延びている。

親切にしてくれたおばさんに身売りされそうになったり、

同じように日本から流れてきたジジイに物を盗まれたり。

上巻には過酷な状況で、野垂れ死にしかけたり、人を信じられなくなっていく様が描かれている。

そんなの。

アニメと違った所

アニメと違った所は「1人」って事。

アニメは、杉本と浅野が一緒に触に飲まれるって話だったけど、小説は1人。

女子校設定だから浅野なんていないし。

杉本は最初にいじめてて泣いてるし、中二病な子でもない。

ずっと、知らない世界で人に騙され裏切られ、住む家も食べるものもなく、ずっと1人。

この1人ってのが、アニメより過酷だと思えそうだけど

なんかよくわからんが、自分はこっちのが怖くもしんどくもなかった。

気質かなと思う。

ヒステリック起こしたり、変な色濃いで心を動かされるシーンがアニメにはあったけど、こっちは1人だ。その方が気が楽だと思った。

単に二回目だからか、映像や音が無いからかもしれないけど。

★母親だけは味方でいてくれるという幻想

陽子がもっている剣は特別なもので、その刀身に故郷の様子が移り、心を乱される。

その映像と共に青猿という幻影が現れるんだけど

そいつが言ってくる事がグサグサ来る。

刀身に映る故郷の様子で、陽子は友達が仮初であったことを見せられ一瞬絶望するけど、野垂れ死にしそうになっている自分の姿とのギャップに苦笑して振り払いつつ

そして、「お母さんがいるから」とその悔しさを払拭しようとするが

青猿にこう言われる

別にお前が消えたのが悲しいわけじゃないのサァ。自分の子供を失くしたのが悲しくて、そんな自分が哀れなだけさ。

たとえお前じゃなくて、もっと最低の子供でも、母親はやっぱり悲しいのさ。そういう生き物だからサァ。

長いこと育てた家畜と一緒だよ。育てりゃ情が移るもんだ。ナァ

この文章が、すげぇと思った。

自分が大事にしていたから、失った自分が悲しいのであって、それが自分だから悲しんでくれているわけではない。

この解釈って一歩間違うと地獄だけど、一つの執着や柵を解く言葉だよなと思って。

青猿は人の絶望を食っているという描写があるし。そもそもこういった言葉をそのまま真実であると受け取る事はややニヒリストすぎるかと思うけど

この内容は、俯瞰すると正しい。

自分がその役割にいるのは、過去そこにいたからであって、代わりの誰かだったら、その誰かがその役割を果たしている。

以前「ベルセルクを描く仕事の代わりを別の人ができるんだから、自分がやめたら成り立たない仕事なんてないんや」みたいなツイートがバズってるのを見たけど。

少し複雑な思いがした。結局代わりはいるんだよな。これからの代わりはいなかったとしても、元々が自分でなければ他の人がそこにいたんだよな、とか。

「自分」ってのは偶々なんだよなとか。

この文章で、「自分である」というのは、一体どういう事なのだろうと思って。

脳を揺さぶる文章だなと思った。

アニメで楽俊と波止場での会話内容で「この作家さんめっちゃ思想家なのでは…」って思ったことがあって、お涙頂戴ご都合ありきたり展開の友達大好き家族大事!みたいな事じゃなくて、小野不由美さんの言葉をもっと読みたくて十二国記シリーズを読み始めたんだけど、これは正解だった。

好きなシーンは飴売りの親子と出会う所

もうどうにもならなくなった所で、飴売りの親子が助けてくれるシーンがある。

この親子は本当に良い親子だと思うんだけど(アニメの設定と少し違いそうだから今後出てくるのかもわからんけど、

陽子はこの前に、騙されたり、裏切られたりしている。

それで信じられなくなっている。

もう固形物が食えないような状態の陽子に、水筒をあけて水を与えてくれ、水飴を与えてくれる親子を信じられない。

信じられないが故に一緒にいけない陽子に、飴と水筒を与えてくれる子供の健気さ

この差が悲しくて泣けた。

人を信じられないズタボロになった心に、水と食べ物を与えてくれる優しさが届かない様子は、体についた傷よりも心についた傷が容易に治らない様子が表現されていたと思う。

アニメでみたから読めないかと思ったけど

魔性の子はほとんどアニメで描かれなかったから問題なかったけど。

こっちは、アニメで一回見てるしなー、途中で飽きて読めないかなーと思ってたんだけど

設定も違うし、普通に面白くてもくもく読めた。

辛いシーンは辛いが、アニメより個人的には受け入れられたし。

こっからは盛り上がる。楽俊出るしね。

おわり

続きも読む。

これずっと読めるかどうかはわからんけど、新作ともう一個前あたりはアニメ後の執筆だしそこまで読みたいから読もうと思うます。

小説は時間も精神のエサにもなって、安いのにコスパいいっすねぇ。

漫画家だから漫画読んだ方がいいんだろうけど、漫画ってすぐ文章に酔わないんだよな。

個人的には酔う文章読んだ時の感覚が結構好きなんで、文字追ってる方が性に合ってるのかもしれんなぁ。