ずっと小説だけ読んで生きていたいと思った
僕は、30越えた辺りからか
あまり新しい作品に馴染めなくなっていた。
食指が動かないというか、そもそも大衆向けに作られるアニメやドラマは
どこか、自分の価値感に合わない感覚があった。
どの作品を見ても、
「友達って素敵」「家族が大事」「愛こそすべて」みたいな
そんな印象。
それはもうわかってる。
ただ、僕はそういう世界に馴染めない。
所詮、僕は人とは馴染めないし馴染めても自分からそれを拒絶しはじめる。
それに、人と上手くやろうとする事にどこか卑しさのようなものを感じる。
上手く生きられないというか、生きるのが下手くそなのだろうと思う。
小説は、なんかそういう、卑しさをもって、自己欺瞞におぼれて死にかかっているような僕のような人間も
なんとかすくい上げてくれるような気がする。
理由は、よくはわからないけど。裾のが広いからだろうか。
裾野が広いのは漫画も同じで、漫画も受け入れてくれる感覚はあるけど、職業が漫画家なだけにどうしてもこう、斜めから考えたり自分ならどうしようという感覚がついて回ってくる。
小説はそういうややこしさも無い。
あと、文章という面倒くさい壁があることが、想像以上に自分の頭の中の余計な言葉を止めてくれて
自分を自分でなくしてくれるというか
自我を一時的に止めてくれるような気がする。
ずっと小説だけ読んで生きていたいと思った。
余計な事は色々、そのままにしてしまって
自分の人生の問題とかもうどうでもよくて
実際にはどうでもいい、知らない世界の知らない出来事に、頭を沈めていたいと思った。
本の世界には自分が居ないから、安心していられるのかもしれない。